ポルシェのフラッグシップクーペ、911の新型が2024年5月28日に発表されました。発表されたのはベーシックグレードのカレラと、最上級グレードのカレラGTS。翌29日より予約受注を開始しています。
■独自の2モーターハイブリッドを採用
992型と呼ばれる現行911ですが、今回のマイナーチェンジではパワートレインが一新されています。ついに、ハイブリッドシステムが911にも搭載されることになりました。「T-ハイブリッド」と名付けられたシステムは、モータースポーツで培った技術が生かされ、この911が初搭載となります。新開発の3.6L水平対向6気筒エンジンに電動ターボチャージャーをプラスし、8速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)にもモーターを内蔵する、2モーターのハイブリッドシステムです。
電動ターボチャージャーは、モーターでタービンを回転させるため排気ガスの排出量が安定しないときでもつねにターボの過給がかけられる装置。排気ガスでタービンが回転しているときは逆にジェネレーターとして作動し、最大11kW(15ps)の電力を生み出します。効率がいいターボチャージャーを採用できたため、従来のツインターボからシングルターボへと変わりました。
DCTに組み込まれたモーターは、アイドリング時でも最大150Nmのトルクを発生しエンジンをサポート。最大で40kWの出力をプラスします。そして、2つのモーターで発電された電気は1.9kWhのリチウムイオンバッテリーへ蓄電されます。これらハイブリッドシステムによる重量のプラスは50kg。カレラGTSに搭載され、システム合計出力は398kW(541ps)/610Nmを発生します。最高速度312kw/h、0→100km/h加速はわずか3.0秒という優れた運動性能を実現しました。
一方ベーシックグレードのカレラには、T-ハイブリッドではなく従来通り3.0Lの水平対向ターボエンジンが搭載されます。先代GTS専用のターボユニットを採用し、290kW(394ps)/450Nmを発生。先代モデルを上まわる、最高速度294km/h、0→100km/h加速4.1秒の動力性能を誇ります。
■フロントにアクティブエアロを装備
カレラGTSには、サスペンションとエアロパーツにもアップデートが入っています。高速走行時の安定性向上と回転半径の縮小を両立させるリアアクスルステアリングを初めて標準装備化。可変ダンパーシステム(PASM)と、10mm低い車高でGTSらしい俊敏なハンドリングを実現しました。
エアロダイナミクスを向上させるフロントバンパーも特徴的です。縦に5つ配された可動式の冷却エアフラップと、両端に隠されたフラップによってアダプティブフロントディフューザーを形成。冷却が必要なときには空気を積極的に取り入れ、冷やす必要がないときにはフラップ閉じてダウンフォースを最適化します。
2シーターと2+2の両方から選べるインテリアでは、911では初めてとなるフルデジタルメーターディスプレイがついに採用されました。12.6インチの曲面ディスプレイには、伝統的な5連メーターをはじめ、7種類の表示が用意されています。ドライバーを中心に操作系を配置するポルシェドライバーエクスペリエンスコントロールコンセプトにより、おもなスイッチはすべてステアリング上もしくはその周囲に置かれました。エンジンスタートは、911では初となるプッシュスイッチ式に改められています。
■大きなターニングポイントだからこそ
ブランドを象徴する911に電動パワートレインを初めてラインナップした、今回のマイナーチェンジモデル。911の長い歴史においても、間違いなく大きなターニングポイントとなるでしょう。
このハイブリッド911の登場により、今後の中古車市場を含めた市場価格の推移にも注目が集まります。今までのICE(エンジン)車が、一層高騰してしまうのか、はたまた逆にハイブリッドが大人気となるのか。空冷から水冷に切り替わったときほどではないにせよ、価格が安定するまではしばらく時間がかかるかもしれません。購入や売却を考えている人にとってはあまり好ましい状況ではないので、見極めるポイントを間違えないようにしましょう。
●新型911 価格 ※2024年5月28日現在
カレラ4 GTS 8速DCT 2365.0万円
カレラ GTS 8速DCT 2254.0万円
カレラ 8速DCT 1694.0万円
カレラ4 GTSカブリオレ 8速DCT 2614.0万円
カレラ GTSカブリオレ 8速DCT 2503.0万円
カレラ カブリオレ 8速DCT 1943.0万円
タルガ4 GTS 8速DCT 2615.0万円
<文=青山朋弘 写真=ポルシェ>