1989年にデビューし、当時世界的に絶滅寸前だった2シーターオープンカーを瞬く間に復権させた、「ユーノス ロードスター」。2代目以降は「マツダ ロードスター」と名を変え、マツダを代表するスポーツカーへと成長しました。歴代を通して「人馬一体」を開発目標に掲げ、決してハイパワーではない軽快な走りは、世界中の人々を魅了し続けています。
そんなロードスターも現行の4代目、ND型が登場して9年が経ちそろそろ次期モデルのうわさも出始めてきました。そこで、熟成を迎えたND型も含めた2024年現在オススメのロードスターはどの世代なのかを、スポーツ走行やサーキット走行も視野に入れた広い視点で解説します。
■各世代の中古車相場は?
まずは、現状の相場から見ていきましょう。24年9月現在、ND型の新車価格帯は289万8500~430万8700円。一方で、中古車の平均販売価格は、約255万円となっています。最新型というだけあり、走行距離の平均も3万1000kmと短め。人気も高いため、歴代では一番高額で相場は推移しています。
05年から15年までの10年間販売された3代目のNC型は、全車2.0Lエンジンを搭載した世代。一番最新型といってももう10年落ちとなりますので、中古車の相場平均は約117万円とND型に比べだいぶ安価になります。走行距離の平均は8.5万kmと、こちらも大きく伸ばしています。
2代目のNB型は、中古車平均価格こそ95.7万円ですが、高額な個体が最近は増えてきています。190万円以上の個体もあるほどで、程度のいいものは応談となっている場合も多く見られます。98年にデビューですので、ネオクラシックとしてはまだ新しいほうではありますが、徐々に価値が上がってきているといえます。
最後に初代のNA型ですが、こちらはもう完全にネオクラシックの高騰の波に乗ってしまっています。走行距離の平均は11.4万kmとマイレージを稼いでいる個体が多くなってはいるものの、中古車平均価格は約174万円と現行ND型に次ぐ高額で推移しています。今後はもう少し相場は上がる可能性も残されています。
■スポーツ走行もOKなロードスターはどの世代がベスト?
現状の相場情報を把握した上で、ここからは4世代すべてのロードスターでどのモデルがスポーツ走行も楽しめるのか、紹介していきます。
●現行ND型(NR-A)
オススメ度★★★★★
スポーツ走行に向いているモデルの筆頭にくるのは、やはり最新の後期型ND。スポーツ走行だけでなく日頃の運転でも有効な装備が満載で、同じNDでも前期型とは別モノともいえるほどの走りの良さ、そして操作のしやすさが特徴です。どのグレードを購入しても楽しめますが、サーキット走行まで視野に入れると「NR-A」が1番のオススメとなります。
ワンメイクレース車両でもあるNR-Aは、一番ベーシックなSグレードをベースに、走りに特化したモデル。ナンバー付き車両によるパーティレースの参戦グレードということもあり、エントリーに必須のロールケージにも対応しています。
最上級のRS以外には装着されないビルシュタイン製のサスペンションダンパーは、NR-A専用だけが唯一の車高調整機能付きとなります。冷却性能や耐久性も強化されているため、サーキットでの走行もそのまま可能。街乗りからサーキットまで、幅広く対応しているグレードだといえます。ただし、最新型のNDに備わるADAS(先進安全運転支援システム)は一切装備されませんので、ご注意ください。
●NC型
オススメ度★★★★
初めて3ナンバー登録となったロードスターでもある、3代目のNC型。そのファニーで親しみやすい外観デザインからは想像できないほど、シャープな走りを披露してくれます。歴代唯一、全グレード2.0Lエンジンを採用。RX-8と共有化した高剛性シャシーも相まって、こと走りに関しては高評価を得ている世代でもあります。
NC型が2番目にオススメできる理由としては、今はまだ安価に購入できるという点、そしてパーツがまだ手に入りやすいという点が挙げられます。特にスポーツ走行まで視野に入れると、パーツの消耗や、万が一アクシデントが起きた際など、部品交換が安易にできることがメリットになります。NC型はまだそういった点で、NBやNAよりも維持がしやすいでしょう。
サーキットまでカバーするのであれば、車高調整機能付きのビルシュタインダンパーや、トルクセンシング式スーパーLSD、フロントサスタワーバーなどがおごられたNR-Aもいいでしょう。ただし、流通量はかなり少ないレア車となりますので、いい状態の個体に出会えればかなり幸運だといえます。
●NB型
オススメ度★★★
過走行車や修復歴有りなどの条件がよくない個体と、逆に状態のいい個体との価格差が大きく開いてしまっている2代目のNB型。中古車市場の平均走行距離が10.7万kmというデータだけを見ても、走行距離が少なく状態のいい個体に巡り合うのはレアケースだということがわかります。平均価格が一番安価にも関わらず、NC型よりオススメ度が低くなる理由はこの部分が大きいといえます。
00年に登場したビッグマイナーチェンジモデル以降、1.6Lと1.8Lという2種類のエンジンが用意されたNB型ですが、NA型が持っていた軽快感や人馬一体感はやはり1.6Lが強く感じられました。アクセル全開のフラットアウトでサーキット走行を楽しみたいのであれば、ロールバー付きのNR-Aを選ぶのが一番正解でしょう。1.6L+5速MTで限界近くまでパワーを引き出して走る楽しみが味わえます。
ちなみにNR-Aは、このNB型からラインナップされ今日に至ります。ビルシュタイン製のダンパーやボディ補強パーツ、LSD、大容量ラジエーターなどのNR-A用装備は、ここから始まっています。NB型もNC型同様に流通数は少なくなっていますので、出会えればかなり幸運だといえるでしょう。
●ND型(中古車)
オススメ度★★
オススメ1位の現行型と比べ、中古車のND型があまりオススメできない理由は明確です。それはズバリ、需要の高さにより販売価格が高水準で推移しているからです。初期型になればもう9年前のクルマになるのですが、条件がいい個体はまだまだ高く感じられるはずです。
オススメができない理由は価格の高さだけではありません。それは現行の最新型の性能がよすぎるからです。それまでのND型を乗っていた人ほど、現行型のよさはわかりやすいでしょう。ステアリングの応答性の高さ、パワーの自然な上昇、コーナリング時のラインのトレース性など、一度乗ればこの気持ちよさは明らかに現行型のほうが上だとわかります。せっかく購入するのであれば、迷わず新車を選んだほうが幸福度は高いはずです。
それでも、条件がいい中古車をお探しであれば、サーキットまでカバーできるNR-Aがオススメです。オプションのロールケージが組んである個体を選べば、購入後すぐにサーキット走行が楽しめるでしょう。
●NA型
オススメ度★
もうすでに値上がりを始めてしまったNA型に関しては、サーキットなどでガンガンに走らせる対象ではなくなってきていて、どちらかといえばコレクターズアイテム化しているのが現状です。ほかの世代と違い、改造車よりもノーマルのほうが圧倒的に価値が上がります。スポーツ走行をしている人は、以前からずっとNA型で楽しんでいる人ばかりであり、これから新規でNA型を購入してとなると、想像以上に高くつくことは目に見えています。
そして、パーツの再供給やレストアがメーカーで始まってはいるものの、現状はどれもこれも非常に高価となっています。スポーツ走行をしてちょっとぶつけてしまった、となると想像以上に高い請求書が手元に届くでしょう。スポーツ走行まで視野に入れるのであれば、NA型は選ばないほうが正解。それでもNA型が欲しいのであれば、かなりの出費を覚悟しておいたほうがよいでしょう。
あとは、ノーマルではLSDが未装着なこともオススメできない理由です。ドリフトなどのスポーツ走行を楽しむためには、LSDは必須。標準のオープンデフでは、特にドリフトはまったくできませんので要注意です。未装着の個体を手に入れた場合、LSDへの交換費用も発生することを覚えておきましょう。
<文=青山朋弘 写真=マツダ>